夏目漱石 『硝子戸の中』 新潮文庫

硝子戸の中 (新潮文庫)

硝子戸の中 (新潮文庫)

 私の座敷へ通されたある若い女が、「どうも自分の周囲がきちんと片付かないで困りますが、どうしたら宜しいものでしょう」と聞いた。
(中略)
「何処かさっぱりした家を探して下宿でもしたら好いでしょう」
「いえ部屋のことではないので、頭の中がきちんと片付かないで困るのです」(P.52)