自分は女の子と見なされない女の子なんじゃないか、という恐怖(小学生編)

 うんと小さかった頃でも、髪が短かった頃でも、男の子に間違われたことも男の子っぽいと見なされたこともなかった。通知表にはいつも「おとなしい」「引っ込み思案」「恥ずかしがりや」「感受性豊か」といった言葉が並ぶ子どもだったけれど、女の子だからそう評されるのも多分そんなに「おかしい」ことではなかったんだと思う*1

 そういう風に、私は外見も内面も「女の子らしい」子だった。自分のキャラは、「女の子らしい女の子」という位置以外に行き場がないのだと小さい頃から知っていた。その一方で、目の保養となる美少女性とか、細やかな気遣いだとか、女の子に期待されている役割――果たせれば女の子としての評価が高くなる役割を、自分が果たせるとは到底思えなかった。私は私に、「女の子らしい」と言われる性質の負の面しか見いだせないでいた。見ていたくなるような可愛い顔ではないし、被害者意識ばかりが強い内面は、「これだから女は」と言われそうな、ねちねちじめじめべたべたしたものばかりが満ちているように思えた。

 女の子らしい女の子でしかないのに、女の子に期待されるような美質を備えていない自分は、異性の対象物*2には一生一度もなれないかもしれないという恐怖は、小学生の頃から抱いていたのだ。女の子の世界には「容姿は普通の女の子が、自分より美人なライバルの妨害を乗り越えて好きな人と幸せになる」物語*3があふれていたけれど、自分はその「普通」より劣っている女の子だと思っていたので、そういう物語でカタルシスを得ることはなかった。

*1:これが男の子だと、男の子のくせに元気がない…みたいな評価になるんじゃないだろうか

*2:桜庭一樹「ブルースカイ」で読んで以来お気に入りの言い回し

*3:少女漫画、少女小説