恩田陸 『蛇行する川のほとり』 中央公論新社

蛇行する川のほとり

蛇行する川のほとり

 眩しいくらい美しい夏の情景と、「少女」でいられる特別な時間が閉じこめられた物語でした。

 有頂天になっていると、見ていた誰かに突き落とされる。素晴らしいことに胸を躍らせていると、必ず誰かが「そんなつまらないもの」と囁く。そうして、背伸びをしてはうずくまり、手を伸ばしては引っ込めて、少しずつ何かをあきらめ、何かがちょっとずつ固まってゆき、わたしは大人という生き物に変わっていく。(P.29)