からくりからくさ (新潮文庫)
「からくりからくさ」(梨木香歩

 ふあ〜すごい・・・。人と人との心のつながりとか、自然への畏敬の念とか、物を大切にする気持ちとか・・・学校の道徳の時間に言い聞かせられたときはすごく嘘っぽく響いたテーマが、梨木香歩さんの作品の中には、自然に織り込まれてにじみ出ている感じ。読んだ後、自分のなんてことない日常を大切にしたくなります。
 穏やかさとかあたたかさだけでなく、どうしようもない負の感情の生々しさもしっかり描かれています。

 ・・・後半の、紀久の編集による本の出版についての展開には、途中まで本気で腹を立てていました。けれどここでは悪役になる奥野の視点で書かれていた部分を読んで、ああこういう見方をしているのか、理不尽なできごとってこんな感覚の違いから起こるのかもな、と思いました。こういう、誰かが何かを作り上げるまでにした苦労とか、それにこめた思いに重きを置けない人間には、絶対になりたくないとも思ったのですが。

 出発前に図書館に行ってきました。返却するだけにしようかとも思ったけれど、結局「オーデュボンの祈り」(伊坂幸太郎)と「リセット」(北村薫)の2冊を借りてきてしまいました。

 …で、「オーデュボンの祈り」読了。感想は帰ってきてからくわしく書きます。