死にぞこないの青(乙一)/幻冬舎文庫
- 作者: 乙一
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2001/10/01
- メディア: 文庫
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それがきっかけで始まる、先生によるマサオくんいじめが、それはそれはいやーなものなのだ。人格を根こそぎ否定する、生まれてきたことを心の底から後悔させる、執拗で陰湿なもの。
僕はみんなより劣っています。ナメクジと同じです。(中略)みんなよりも地位は低いです。生きている価値はありません。僕はバカです。死んだほうがましです。根暗でスポーツもできないので友達なんてできません。とにかく劣っているので僕はみんなのように生きていくことはできません。それらの言葉をそれぞれ二十回ずつ、先生の命令で唱えさせられた。
この、放課後の理科室でのシーンを読んだ時、わたしは死にたくなった。死にたいなんて軽々しく使ってはいけないと思うけれど、他にぴったりくる言葉が見つからない。
このように、いじめの場面では散々落ち込んでしまう。アオというマサオの幻覚らしい恐ろしい外見の少年が現れて、事態が動いていく章では、どうなることかとはらはらするし、怖くもなる。けれど、ラストには救いが用意されていてすごく好きだ。最後の2行は(ここに引用するのは控えるけれど)マサオくんと自分との共通点を見つけて、読んでいてマサオくんへのいじめに打ちのめされてしまうような人へ向けられたものだと勝手に思っている。
生きているかぎりみんなそうなんだ。いつもだれかに見られていて、点数をつけられる。恥をかきたくないし、よく見られたい。誉められるとうれしいけれど、失敗すると笑われそうで心配になる。きっとみんな、自分が他人にどう思われているのかを考えて、恐がったり不安になったりするんだ。(P.208,209)