死神の精度(伊坂幸太郎)/文芸春秋

死神の精度

死神の精度

 『グラスホッパー』はどうしても好きになれず楽しめなかったけれど、これは好きー!


 この物語に登場する「死神」の仕事は、指定された人間の調査を行い、その人間が死ぬのを「可」とするか「見送り」とするか判断すること。判断といっても、この調査精度は形式的なもので、よほどのことがなければ「可」と報告する、というもの。死神たちは人間の生死にさして思い入れはないようですが、人間たちの作り出した音楽は「聴いているだけで幸せになれる」と愛好しています。
 6つの短編に共通する語り手である死神・千葉の、人間たちとの距離感、ずれ具合がおもしろいです(人間じゃないものが人間として紛れ込んでいるのだから、ずれているのは当たり前のことだけれど)。
 一見、まったく別々の6つの物語ですが、思わぬところに繋がりが見出せるのがいいですね。
 「恋愛で死神」「死神対老女」が特に好き。