東京日記 卵一個ぶんのお祝い。(川上弘美)/平凡社

東京日記 卵一個ぶんのお祝い。

東京日記 卵一個ぶんのお祝い。

 四月某日 晴


 電車に乗る。暖かな日。暑いくらいだ。
 おかっぱの女の子が二人、乗りこんでくる。顔も服装もそっくりの二人である。ふともも丈のミニスカート、グレーのセーター、黒いハイソックスにトートバッグ。どれもそっくり同じものだ。
 よく見ると、片方の女の子の方がいくらか年上である。皺が、口の端や目のあたりに、少しある。しばらく二人でくっつきあってぺちゃくちゃお喋りをしていたが、やがて若い方の子が、「ママー、あたし、おなかすいちゃったなー」と言ったので、仰天する。

 淡々。ほのぼの。これぞ日記だなあ、という感じで、いかにも川上弘美さんだなあ、という味わいでした。