ジョナさん(片川優子)/講談社

ジョナさん

ジョナさん

 良い意味で、「この作品を書いたのは現役女子高生」という感じがします。良い意味で、というのは、会話のテンポやノリがとってもリアルで、一応作者と同い年のわたしにとってすごく近いものに感じられる、ということ。高校二年生の主人公、チャコの一目惚れの相手(名前が分からないので「ジョナさん(仮)」と命名されることになる)が「色白の速水もこみち」と例えられることをはじめ、出てくる固有名詞が今っぽい。

あんな生き方最低だ。私の中のおじいちゃんが嫌いな私が醜く叫んだ。(中略)でもね、人はどんどん年を取っていくものなのよ。年の上に年を重ねて、恥の上に恥を重ねて、それを自分でも気づけなくなっちゃうまで生きてしまうものなんだよ。そんな人生、最悪だ。(P.41)

 おじいちゃんが亡くなるまでの1年間、介護をしていたお母さんが、「1年ですんでよかったわ」と言ったこと。昔は好きだったはずのおじいちゃんを思い出すたび、嫌悪感を抱くようになってしまったこと。

 家族関係をはじめ、ジョナさんへの片想いに、仲の良い友達との喧嘩に、チャコの悩みの尽きない日々が描かれます。「リンちゃんは一時期あだ名がP子だった」とか、くすっと笑えるところもあって楽しく読めました。終盤に意外なつながりが明かされるところも良かったな。

「あんた、すごい不器用だから。いろんなことをひとつひとつ片付けるのにすごい時間がかかって、はたで見てるこっちが歯がゆくなるくらい一生懸命だから。そんなふうに世渡り下手な人間が幸せになったら、たぶん救われる人がたくさんいると思うから。だから、幸せになりなさい」(P.227)

 全体を通して爽やかな印象の物語でした。ラストも好きです。