ボーイフレンドはエッチなゆうれい

 小学三年生か四年生の時、教室の後ろにあった本棚の中に、『ボーイフレンドはエッチなゆうれい』という本がありました。この作品の作者が、『おれがあいつであいつがおれで』の山中恒さんだと知ったのは、ずうっと後のことでしたが。


 いじめられっ子の女の子・チカが小学四年生に進級したばかりの頃、ゆうれいの男の子が現れて、チカをいじめようとするいじめっ子の企みをことごとく邪魔し始めるのですが・・・その中で、ゆうれいの男の子が、いじめっ子の男の子のズボンを下着ごとおろしちゃうシーンがあって、しかもそれにちゃんと挿絵がついていたのでした。


 その本を読んでいると、けっこう周りにからかわれたんです。覗き込んできた同級生がその挿絵を見て、「うわーちほ、えろいの読んどるー」ってなことを言われました。読んでいる途中で取り上げて逃げたりする男の子もいました。
 で、わたしは「エッチな話じゃなかもん!読んどらんとに絵ばっかり見てそぎゃんこつ言わんでよ!」と本気で憤慨していました。取り上げられたら追っかけて取り返そうとしていました。中身を読んでないのに挿絵ばっかり見て適当なこと言うなんて邪道だ!許せない!とか生意気にも思ってました。
 その本はお気に入りのひとつで、何度も読んでいたのですが・・・休み時間とか、同級生が周りにいるときにその本を読めば、からかわれたり邪魔されるのはわかっているんだから、ゆっくり読みたいなら人がいない時と場所を選んで読めばすむことなのに、「別に変な本じゃないのにこっそり読むことないもん」と意地になって、自分の席で読んでいました。そしてまた周りの同級生にからかわれる・・・ということの繰り返しでした。

 活字への愛着はこの頃からあったみたいです。