ななつのこ(加納朋子)/東京創元社

ななつのこ (創元推理文庫)

ななつのこ (創元推理文庫)

 短大生の入江駒子が表紙に惹かれて手にした『ななつのこ』という短編集。駒子がこの本の作者にファンレターを書くことから、物語は始まります。本の感想と、身近で起きたささやかな事件のことを綴ったファンレターには、思いがけず返事がやってきました。しかもその手紙の中で、その事件にまつわる謎が見事に解き明かされていたのでした。


 ほんわかふんわり優しい雰囲気の作品です。謎が解き明かされた時も、びっくり、とか衝撃と受ける、というよりは、そういうことかーと納得してうなずいてしまう感じ。次の謎は何かな、と楽しみながら読めました。



 個人的に共感してしまったのは、この場面。

 いかなる運命のいたずらか、理由はさっぱり分からないのだが、私は歩いていて実によく色々なものにぶつかる。(中略)
 そんな私ではあるが、この四月から車の免許証を取得するべく、教習所に通っていると打ち明けた時、皆一様に「あんたが?」と顔をしかめたのは失礼というものだろう。

 ・・・いや、わたしもよく教室の中で机や椅子にぶつかったりつまづいたり、道歩いてて何もないところで突然転んだりするところを友達に目撃されまくっているので。学校で三年生に対して「自動車学校入校について」という説明がされた後、「ちほは行かない方がいいと思うよー」「その方が身のためだよ」「危ないよ」「うち、もしちほが免許取っても、絶対ちほが運転する車には乗らん」というようなことを口々に言われてしまったので・・・。