僕はかぐや姫(松村栄子)/福武書店

僕はかぐや姫

僕はかぐや姫

 …センター試験に出題された部分からも気にはなっていたものの、全部読んでさらにツボにはまりました、『僕はかぐや姫』。
 「少年という言葉には爽やかさがあるけれど、少女という言葉には得体の知れない胡散臭さがある(P.53)」と考えつつ、「僕」という一人称を使いつつ、裕生の自分勝手さとか傲慢さとか自意識過剰っぷりは、すごく女の子らしいというか、少女性むきだしな感じがします。
 上手く言えないけれど、このお話好きです…。絶版なのがますます悲しくなってきた。再刊してくださる出版社があったら、ものすごく感謝しちゃいます。



 別のことに思考が飛んじゃった箇所、その一。
 作中に、裕生が机にした落書きに返事があったことから、顔も名前も知らない相手との他愛ないメッセージのやり取りが始まるエピソードがあります。思わずびゅんと乙一さんの『A MASKED BALL』に思考が飛んでしまいました(こちらはトイレの落書きですが)。



 その二。

あてどなく続くであろう恐ろしい未来を、自分だけは逃れ得るのではないかと心のどこかで信じていた。(P.46)

 ここを読んだ瞬間、

わたしなんか 死ねばいいと想ってた でもどこかで わたしだけが 生きのびることだけ信じてきた

 この、Coccoの『海原の人魚』の一節が頭に浮かびました。