ひとめあなたに…(新井素子)/角川文庫

ひとめあなたに… (角川文庫)

ひとめあなたに… (角川文庫)

 一週間後に地球に巨大な隕石の衝突によって地球が滅亡する、とわかった時。電車も動いていない、暴走するたくさんの車のせいで道路事情も最悪、という状況の中、「神様が、あたしもちゃんと二本くれたわよ。あ・し」と、東京から鎌倉まで恋人に会うために歩いていく圭子。彼女は歩いていく道々、極限状況の中でさまざまに狂った人たちに出会います。
 読み始めたのはけっこう前のことだったのだけれど…。や、もう、狂った人妻を描いた「あなたの為に チャイニーズスープ」の章で吐き気を催して、読むのを中断していたのでした…。
 あ、ここ読んだ時(読んだって言えるのかな、けっこう飛ばしたからな…)思い出したのが、Cocco「My Dear Pig」の中の、「あなたを食べる 独りで食べるの 心配などしないでね 一滴の血も残したりしない」って一節。
 「あなたの為に チャイニーズスープ」はほんとにこの歌詞のまんまの話だと思う…ただしここでの「あなた」とはブタさんじゃなくて、地球滅亡までの一週間を妻ではなく不倫相手と過ごそうとした旦那さんだったりするんですが…。
 いやもうここ読んだ日は睡眠時間が減るほど怖かったので、この章、もう二度と開きたくないです…。


 あ、でも、やっぱり最後まで読んでよかったです。ラストがすごく好き。
 …いや、ラストだけ好きなんじゃなくて…その、もう読みたくないと思った箇所も全部含めて、この凄まじい物語が好きなのだけれど…うまく言えないなあ。