古橋秀之 『ある日、爆弾がおちてきて』 電撃文庫

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)

 おもしろかったー!
 あとがきによると、“「フツーの男の子とフシギな女の子のボーイ・ミーツ・ガール」という大枠だけ決めて、あとは自由にやってみよう”という趣向で書かれたものだそうです。舞台や登場人物はまったく違う短編が7つ収録されています。

ある日、爆弾がおちてきて】ある夏の日、予備校生の長島の頭上に、昔好きだった女の子とうり二つの、自称「爆弾」がおっこちてきます。なんだかよくわからないままに、長島はその子(?)とデートをすることになったのですが。
【おおきくなあれ】くしゃみなどのちょっとしたショックで「退行」し、一時的に記憶をなくしてしまう「脳にくる風邪」が流行っている頃。小暮慎一は、その風邪にかかった幼なじみの高峰真琴を、家まで送り届けることになったのですが。
【恋する死者の夜】死者が蘇り、生前のある一日をひたすら繰り返すという現象が起こる時代。死んだはずのナギという女の子も、まもるの元を毎晩訪れるのです。
【トトカミじゃ】なりゆきで図書委員になった蒲田は、図書館に住む小さな女の子の姿をした神様に出会います。
【出席番号0番】肉体をもたない「憑依人格」、三年A組出席番号0番の日渡千晶は、クラスメイトの体を日替わりで借りています。……「メガネをかけた女の子はポイント高い」という方におすすめしたいお話。かもしれない。
【三時間目のまどか】高校生の林田は、三時間目の授業中にだけ、教室の窓の、自分が映っているはずの場所に、女の子があらわれることを発見します。やがて彼は、彼女と「窓通信」をすることになるのですが。
【むかし、爆弾がおちてきて】「ぼく」が住む街に、六十年前に投下された「時間潮汐爆弾」。爆心地には、時間がものすごく遅く流れる状態で固着してしまった女の子が取り残され、そこは現在、平和記念公園になっています。公園の管理人である祖父の影響もあって、「ぼく」は彼女に特別な思いを抱いています。



 どれも、語り手の男の子には好感がもてるし、登場するさまざまな女の子はみんなかわいいですっ(力説)。切なかったり、おかしかったり、救いがなかったり――どれも好きなので迷うけれど、いちばんを決めるなら、表題作です。

 『トトカミじゃ』の設定には特にときめきましたー。大きくて、古くて、学校のはなれの図書館。「放課後も遅くになると、西日が射し込む館内は、がらりとしてなんとも物寂しいありさまになる」とか、いいなー。遅くまで居座って本読んでたい(笑)。あと、わたしも図書館の神様になりたい!とも思ってしまいました。「新刊、奉納せよ」と命令したいっ(笑)。

 脇役のキャラも、いいなあって思います。『出席番号0番』の土屋君とか。