皿海達哉 『チッチゼミ鳴く木の下で』 講談社

 児童書読書日記さんのレビューがきっかけで読みました。
 主人公の進が引き起こしたものごとは、後味のよくない結末を迎えます。ずるいこと、ごまかすこと、正直でないことは、決しておおっぴらに褒められたり推奨されたりすることはないけれど、人間にはそれを仕方のないことだとしてしまえる面もあるのだという風に、描かれているように思えます。

 新美南吉『屁』の、「心の何処かで、こういう種類のことが、人の生きてゆくためには、肯定されるのだと春吉には思えるのだった」という一文を思い出しました。