江國香織 『きらきらひかる』 新潮文庫

きらきらひかる (新潮文庫)

きらきらひかる (新潮文庫)

 今までは、江國香織作品に共感することはあんまりなくて、あっても「ほんのり」くらいで……なんとも言えない怖さとか不気味さを感じることもあったけれど、それもやっぱり「ほんのり」で、きれいな言葉で構築された世界に心地よく浸れるものが多かったのでした。それで、江國さんの作品は読んでへこむことはないだろう、とこの本を読むまで思ってました。
 でも、この作品は、笑子の不安定さが……共感しているわけではないのだけれど、すごく胸に痛くて。笑子が真剣にした「もっと具体的で、何ていうかひどく突飛な相談」の生々しさと痛々しさに、がくがく揺さぶられてしまいまして。読後、なんだかへこんだのと似た状態になってしまいました。