氷の海のガレオン

氷の海のガレオン

氷の海のガレオン

 文庫版未収録の『天上の大陸』『薬草使い』が読みたくて、図書館で探して借りました。
 ええと、自分が言葉にできなかった気持ちを、代わりに言葉にしてくれた、と感じるほど、共感レベルが高かったわけじゃない。でも、ええと、なんて言えばいいのかな。
 『氷の海のガレオン』の杉子は小学六年生、『天上の大陸』の美福は中学生、『薬草使い』の祥子は高校生。主人公の少女たちと同じくらいの年齢だった頃に、言葉にできずに抱えていた気持ちの断片が、物語の中に見えた気がしました。

 怒っちゃいけない。町の子供はみんなばかなんだから、目に見えることしか信じられないし、ろくなもの見てないんだから。そのうちこの国と一緒に滅んじゃうんだからって思うの。かわいそうだから、許してあげようって。
 でも、また次にはね、そんなこと考えてる、わたしは一体なんなんだって思うの。
 みんなとわたしの違いってなんなんだって思うの。
 だって、生意気だよね、そういうの。かみさまにだってきらわれそうな気がしちゃうよね。
 そうなるともう、世の中でいちばんわるいのは、実はわたしかも知れない、とか思うの。
 それでどんどんかなしくなって、涙出そうになるんだけど、泣いたりしたら、よけいに何か言われちゃうでしょ、それで、またおんなじ気持ちの繰り返しでしょう。
 そのうちそれがどんどんどんどんおおきくなって、もう、体中いっぱいになって、なに考えてるかもわからなくなるの。(P126-127)