マクドナルド 脇明子訳 『かるいお姫さま』 岩波少年文庫

かるいお姫さま (岩波少年文庫 (133))

かるいお姫さま (岩波少年文庫 (133))

 併録の『昼の少年と夜の少女』は、『“文学少女”と飢え渇く幽霊』にも登場した話ですね。魔女によって暗い部屋に閉じ込められ、昼に寝て夜起きるよう育てられた少女と、日の当たる場所で育てられて闇を知らない少年の物語。少女の方は、自分は夜寝て昼起きているのだと思っているので、こっそりと部屋を抜け出して初めて見たお月さまをお日さまだと思ってしまうのですね。その間違いが正されるのは、昼の少年と出逢ってから。個人的には、少女が初めて庭園に出た夜、そこ出逢ったものたちを大事にいとおしむようすが瑞々しく描かれているシーンがお気に入り。
 『かるいお姫さま』は、魔女の呪いで体の重さがなくなったために空中にふわふわ浮かんでしまうだけでなく、感情の重さも失って「深刻になる」ということを知らずに育ったお姫さまの物語。登場人物同士の会話も愉快で、楽しめる作品でした。