斉藤美奈子 『紅一点論』 ちくま文庫

紅一点論―アニメ・特撮・伝記のヒロイン像 (ちくま文庫)

紅一点論―アニメ・特撮・伝記のヒロイン像 (ちくま文庫)

『紅一点論』は性差にこだわった本ではない。
「制限つきしりとり(花の名前に制限してのしりとり、や、カクテルの名前に制限してのしりとりのように、枷を設けたしりとり)のように、あえて性差というカメラアイを設けて、アニメと伝記のグラフィティを見てたのしむ本である。(P327-328 姫野カオルコの解説より)

 この本が単行本として世に出たのは、1998年。本書の中で取り上げられているアニメは、わたしが小学生時代リアルタイムで観ていたものがあって(「セーラームーン」とか「りりかSOS」とか)、リアルタイムじゃなくても観たことのあるものもあって(エヴァンゲリオンとか)、たいへんおもしろかったです。子ども向けの伝記についての記述も、講談社火の鳥伝記文庫を愛読書にして育ったわたしとしては、興味深いものばかりでした。

しかも男の子の国は、おもちゃ屋さんと同盟を結んでいるので、異常な軍拡志向である。番組も後半に入る頃になると、なにがなんでも軍備増強が計画され、前機の性能を上まわる新型マシンや巨大メカが建造される。(P.22)

女の子の国に棲む女の子たちは、ほとんど全員、恋愛ボケの色ボケである。戦いに巻き込まれるきっかけ、行動のモチベーションじたい、じつは色と欲がらみのことが少なくないのだ。(P.32)

 アニメの中の女性キャラが、「魔法少女」「紅の戦士」「聖なる母」「悪の女王」と明快に分類されて語られています。エヴァなら、「葛城ミサトは大人になった『魔法少女』である」「赤木リツコはチーム内の『悪の女王』である」「アスカは挫折した『紅の戦士』である」「綾波レイは傷だらけの『聖なる母』である」というふうに。

 少女に救いは求めても、少女を救うことに、アニメの国は無関心だったのである。(P.222)