魚住直子 『超・ハーモニー』 講談社文庫

超・ハーモニー (講談社文庫)

超・ハーモニー (講談社文庫)

もしあの背中をナイフで刺したらどうなるだろう。母親の体から真っ赤な血がふきだすのだろうか。代わりに真っ黒いどろどろしたものが出てくるんじゃないだろうか。響はそんなことを夢想した。(P.72)

 どうあっても、「親」というものをどうでもいい存在だと片付けることはできない。「わかってくれない」のが辛くて、でも「どうせわかってもらえないから」と切り捨てることはできなくて、「認めてほしい」と願ってしまう……そういう葛藤がしっかり描かれていて、良かったです。