市立図書館にて

 中学時代の国語の先生に会いました。
 いつもの通りにふらふらと棚と棚のあいだを歩き回っていたら、近くに立って本を眺めている女性がやけに見覚えのある感じのする人だということに気づきました。
(どこかで見たことある→あ、中学の国語の先生→○○先生)……と、どうにか記憶を手繰り寄せてたはみたものの、でももし名前間違ってたら失礼だし声かけていいものかどうか、そもそも先生がわたしのこと覚えてるかどうか、とぐるぐる考えていたら、先生の方が「柊さん?」と声をかけてくださってびびりました。この国語の先生が、担任になったことはなかったし、わたしみたいな地味な生徒のことなどが記憶に残っているわけがないし、と思ってたので。でも、全校生徒100人に満たない学校だったからな……人数多い学校よりは記憶に残る確率が高いのだろうか。
 「もう何歳になったのかな」「も、もうすぐ二十歳です」とぎこちなく受け答えして、東京にある大学に行ってて、今帰省中で、というようなことを話した後、「(自分のことを)覚えられてるか自信なかったので声をかけようか迷いました」と言ってみたら、「覚えてるよー、古典好きな子だったね」と返されました。こ、古典好きな子……そう認識されてたのか……。当たり前か、そういえば百人一首大会の引率もしてもらったし(今思い出した)。
 その後もしばらく他愛ない話をしました。わたしが抱えていた本の中に永井荷風ふらんす物語』を手にしているのを見て、先生が「それおもしろいよー」と言ってくれて、ただそれだけのことなのだけれどやけに嬉しかったです。