小川洋子 『冷めない紅茶』 福武文庫

冷めない紅茶 (福武文庫)

冷めない紅茶 (福武文庫)

あの頃は、どんなささいな事でも、喋るのはとても難しいことだった。自分の会話には、必ずどこかに失敗があった。相手を白けさせたり、声が小さすぎたり、沈黙が長すぎたりした。喋ることは、わたしに切ない後悔をもたらした。だから、唇がすっかり乾いてしまうくらい長い時間、いつも黙っていた。わたしは、教室の軒に何ヵ月もぶら下げられたまま忘れられ、茶色くパリパリになってしまったドライフラワーのような子供だった。(P.21-22)

 胸が痛む。なんか涙出てきた。