岡田淳 『ふしぎな木の実の料理法』 理論社

ふしぎな木の実の料理法 (こそあどの森の物語 1)

ふしぎな木の実の料理法 (こそあどの森の物語 1)

 こそあどの森の物語、第一作目。寒い季節に読むのがぴったりなお話でした。

 コートのフードをかぶって、ひとり粉雪のなかを歩きながら、もうたくさんだとスキッパーは思いました。
 せっかく練習していったのに、会話はまるでうまくいかなかったのです。(P.105)

 一緒に住んでいる博物学者バーバさんが旅に出て以来、ひとりで暮らしていた少年スキッパーの元へ、ふしぎな木の実と手紙が届けられます。手紙には木の実の料理法が書いてあったようですが、とある事情から一部がにじんで読めなくなってしまっていました。しかたなく、判読できる「つくりかたは……さんにたずねるとわかるでしょう」という部分を頼りに、こそあどの森の住人たちの家を訪ね歩くことになるのですが、ひとりで本を読んだり化石を眺めたりするのが好きで、自分から人を訪ねたことがなかったスキッパーにとって、それは気軽にできることではないのでした。おっくうになったりぐったりしたり、ドアの前まで来てためらったり。

 そんなスキッパーの心の動きに共感できてしまう自分がいるよう……。