活字倶楽部07秋号、P.94の三村美衣「少年少女の書物」より
このコーナーで今回取り上げられているのは、木地雅映子『悦楽の園』。この中に、気になる文章がありました。
余談だが、このピュアフル文庫、あさのあつこや佐藤多佳子の児童書に混じって、松村栄子『Talkng アスカ』や石井睦子『卵と小麦粉それからマドレーヌ』、川西蘭『コーンクリームスープ』など、地味だけどいい作品を収録している。
と、とりあえず、石井睦子じゃなくて石井睦美です!
……まず、『卵と小麦粉それからマドレーヌ』は元々児童書としてBL出版*1から出たものですよね。この作品が、松村栄子や木地雅映子など、児童文学畑出身でない人の作品と一緒にくくられて、「児童書に混じった児童書以外の作品」であるかのように語られると違和感があります*2。
それに、「地味だけどいい作品」という言葉は、あさのあつこ『The MANZAI』や佐藤多佳子『スローモーション』の作品にも当てはまると思うのです。児童書とか一般とか純文学とか、幅広いジャンルから派手ではないけれど読み継がれていってほしい作品を復刊してくれたり文庫化したりしてくれているところがピュアフル文庫のよさの一つだと思っていますし。
……読んだ時、瞬間的に「児童書に混じって〜地味だけどいい作品」という言い回しに腹をたててしまったんですね。児童書を低く見ないでください!というような。そういう意図ではなかったのだろうけれど。
*1:このBLは“Best Library”の略。男の人同士の恋愛物語のことではありません。公式ホームページ(http://www.blg.co.jp/index.htm)によると、「優れた国内外の絵本中心に企画・編集、心に癒しを与える出版社です」とのこと
*2:こういう物言いをしてしまうと、自分の中にそもそも児童文学ってなんだろう児童書ってなんだろう、今、そういう区分にこだわる必要性がどれくらいあるんだろう……という疑問が芽生えてきてしまいますが。とりあえずここでは、児童向けとして出版されたかどうかだけを目安にしています