作・いしいしんじ 絵・植田真 『絵描きの植田さん』 ポプラ社

絵描きの植田さん

絵描きの植田さん

 ほとんど眠ってもいないみたい、とおかみさんは思った。法律や簿記の知識にとぼしく、なんの手助けもできないこの自分ったら、こころの底からふがいないわ。
 そう漏らすと、イルマは雪を割るような笑顔をにっこりと向け、おねえさんがいてくれるだけで、私は大いに助かってるのよ、といった。私の大好きな人が身近にいて、その人らしくまじめに、懸命に暮らしていてくれる、ってことが、いまの私にとっては何よりうれしいの。(P.42)

 いいないいな。こういうのいいな。大好きな人の役に立ちたいけど何にもできないなあと落ち込むことは多々あるけれど、私も身近にいるとうれしい人になりたいものです。