はやくおばあちゃんになりたい

 いつまでも若いままでいたいと思わないわけではないけれど、ときどき、女の子とか女性とかおばさんとか全部すっとばしてさっさとおばあちゃんになりたい、と思う。

あたしはきれいだろうか、(中略)きれいじゃない、とも思うし、けれどそんなにひどいわけでもない、とも思う。テレビはもちろん、学園のアイドルにもなれないけれど、整形手術を真剣に考えなければならないほどでもない、ということ。それにしてもこの先あと何百回くらい、こういうことを考えなければならないんだろうか。つまり、あたしはきれいなのか?だれかに好かれるくらいにはきれいなのか?それとも見向きされない?という、たとえば、鮮魚売場の、刺身用の鯵みたいなことを、だ(角田光代『あしたはうんと遠くへいこう』)

 とっとと鮮魚売場から逃げ出したい。いや、もしかしたら性別女として生まれた以上こういう悩みからは一生逃げられないのかもしれないけれど、放っておいても若さは時が経てば失われるんだから焦ることはないのだけれど、それでもときどき思う。「女の子」でいるのは、楽しいのと同程度につらい。わたしがつらい、のは……たぶん周囲が「女の子」に期待する役割の一つであろう、目の保養となる美少女性を持っていない……というのが理由の一つ。

 元々の顔立ちの平々凡々っぷりはわかりきっているのに、ときたま自分の笑顔だとか雰囲気だとかを「かわいい」と形容されるだけでものすごく嬉しいのに、それでも美少女性を持つ女の子になれないのを悲しむ気持ちはなくならないんだなあ。厄介なものです。