石井睦美 『レモン・ドロップス』 講談社

レモン・ドロップス

レモン・ドロップス

「ああ、あと何回、好きだとか、もういいとかを繰りかえさないといけないんだろう」と、綾音が言ったので、あたしは綾音の顔をじっと見て、
「驚くほどたくさん」
と、答えた。
「ああ、めんどっちい」(P.69)

 友達でも、恋人でも、家族でも、いつもいっしょにいて、なんでもよく知っていると思っているひとたちの、ほんとうのとこなんて、ほんとはちっともわかってはいなくて、でも、ふとした瞬間に、ある一瞬に、ほんとうのそのひとに出会えたりする。そういうのじゃないかと思った。(P.194)