ツ、イ、ラ、ク(姫野カオルコ)

ツ、イ、ラ、ク

ツ、イ、ラ、ク

 最初に、Yahoo!ブックスの姫野カオルコさんへのインタビューから、『ツ、イ、ラ、ク』の構成について語られている部分を引用。

帯に"恋愛小説"とあるのを見て、最初の小学生時代のシーンを"ここはプロローグなんだな"と思う方がいるようなんです。恋愛小説なのだから大人が主人公に決まっていると思い込んで。けど、それ、間違いですね。あとがきにも書きましたが、小学生でも大人でも恋愛の感情は一緒。というより、むしろ小学生のほうが生々しいし、いやらしい。子どもって、大人と違っていろんなしがらみがないぶん、性欲もむき出しですから。で、中学生になると、それに"好き…"というプラトニックな部分が加わる。大人になるとさらにプラトニック面というより、経済状態とか立場とか、相手そのもの以外の状況も考慮しての人選意識が強くなる。私は、この物語を、そういうグラデーションに構成したのです。

 分厚かったけれど、途中で止められなくて一気に読んでしまいました。小中学生、「女子」と「男子」だった頃のグループ編成、教室にあったルール、そして恋愛模様が恥ずかしいほど克明に描き出されて、読んでいる方が赤くなったり残酷さにどきりとしたり、訪れるできごとひとつひとつに、そこらの壁を叩きたくなるくらい切なくなったり、いとおしい気持ちがわきあがってきたりしました。
 「忘れられなかった。どんなに忘れようとしても。ずっと」という言葉が読んだ後も色濃く残っています。