バッテリー?(あさのあつこ)

バッテリー〈5〉 (教育画劇の創作文学)

バッテリー〈5〉 (教育画劇の創作文学)

 登場人物たちひとりひとりの言動に、変化に、言葉にしない思いに、はらはらどきどき。派手な試合が行われなくても、こんなにおもしろいんだ。

 突出した才能を持って生まれたということは、幸福なことでも恵まれたことでもない。才能自体にふりまわされ、追いこまれ、人間として成熟しないまま、潰れていく。そんな危うさを抱え持って、生きていかねばならないということなのだ。(P.138)

 巧はまさに、抜きん出た才能を持っていて、その危うさをいちばんわかっているのは、やっぱり巧の祖父・洋三なんだと思います。

「巧、野球に選ばれるんじゃなくてな、野球を選ぶぐらいの者になれや」
(中略)
「おまえ、世の中に、どんなものがあるんか知っとるんか。自分がなにができるんか、なにができないんか、なに一つはっきりわかってないじゃろうが。そこをちゃんと知ったうえで、それでも野球をやろうとする者だけがな、自分で野球を選んだと言えるんじゃ。(後略)」

 139ページの、洋三が巧に言ったこの言葉が印象的でした。