読み聞かせ

 両親に読み聞かせをしてもらった記憶はあんまりない。農繁期で、家族みんな忙しくしていて家にいない時間が多かった時期、小さかったわたしはしんと静まり返った家の中、一人きりで畳の部屋で座り込んだり寝そべったりして、本を読んだり絵を描いたりしていたことはかなり鮮明に覚えている。それがあんまり苦にならない、典型的な、外で遊ぶより屋内でそういうことをしている方が好き、というタイプの子だったと思う。だいたい、保育園児時代はすべり台をすべってもちゃんと着地できないというくらいとろい子だったから、外で遊ぶのはあんまり楽しいことじゃなかったのだ。


 読み聞かせをしてもらうのが、嫌いなわけじゃなかった。けれど、わたしは自分で読み進んでいくほうが好きだった。たぶん、自分で読んで自分で取り込んで、自分だけの世界を作る方が好きだったんだろうな、と思う。