楽園のつくりかた(笹生陽子)/講談社

楽園のつくりかた

楽園のつくりかた

 「将来の夢っていうより予定」は「会社をつくって大もうけして、室内温水プールがついた宮殿みたいな家に住む」ことだとふだんから口にしている星野優。「中学受験突破組から中高一貫教育をへて、一流名門大学へ進み、一部上場企業に就職」という彼の計画は、中学受験を突破して1年半、中学2年生で打ち砕かれることになります。理由は父親の実家への引っ越し。しかもそこはとんでもない田舎だったのでした。

 まず、田舎を賛美しすぎていないところ、安易に「都会の喧騒で疲れたこころが自然の中で癒される」とならないところが好き。都会育ちの優くんにとっては、田舎生活は慣れないことの連続で、最初はかえって疲れるものでしかないのですよね(笑)。
 終盤で切ない事情が明かされます。それを知ってから、はじめからもう一度読んでみると、それまでに紡がれたエピソードの裏に、複雑な気持ちがあったことがわかります。