おかあさんがいない日に読む本
- 作者: 現代児童文学研究会
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 1992/03
- メディア: 単行本
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個人的所感。思いっきりネタバレ含みます。
タイトルも著者も覚えていなかったけれど、「満員の列車の中でおしつぶされて死んでしまう女の子」の話だと記憶していました。それが、とっても衝撃的だったのだと思います。
今日、読み直して…文字を追ううちに、その女の子・慈雨ちゃんの、黒くてつやつやの髪の描写だとか、消しゴムを盗っただろうとあらぬ疑いをかけられても黙って耐えていたというエピソードだとか、「一生かみさまにつかえる人になる」ときっぱりと言うようすだとかに、ああこれ読んだことあったな、ってはっきり思えて…初読の時に思ったこともあざやかによみがえってきました。
濡れ衣を着せられても何も言わなかった慈雨ちゃん。戦争のために貨物列車に乗らなければならず、次第にぎゅうぎゅうづめになっていく列車の中で、いちばんすみっこに押しこまれて、死んでしまった慈雨ちゃん。
わたしはこれを読んだ時、慈雨ちゃんをかわいそうに思う気持ちとか、悲しい話だなと思う気持ちとかより、「慈雨ちゃんの生き方ってきれいだ」「こういう死に方ってきれいだ」という気持ちが先にわきあがってきたのでした。あがいたり不満を言ったりしないで、黙ったまま、理不尽なできごとも受け入れる生き方が、ものすごくきれいに思えて…自分もこういう風に、生きて、死ねたらいいな、と思ったのでした。
一応、これを初めて読んだときから、10年くらい経っていて。ぜんぜん、そういう風な生き方はできていないけれど…そういう生き方を「きれいだ」と思う気持ちは、今も変わらないのでした。