「僕が君を助けたわけじゃなくて、たまたま僕の言ったことと、それを受け取る側の君の波長があっただけだよ。同じことを言ってもまったく効果がない生徒だっている。それに僕だってすべての生徒が求めていたり欲している言葉が分かるわけじゃないんだ。いや、むしろ、ほとんどわからないと言ってもいい。それは年齢のせいだけじゃなくて大人同士でも同じことなんだ。相手の言っていることを完全に汲み取れるほうが珍しいんだ」

 島本理生ナラタージュ』(角川書店)P.108