石井睦美 『卵と小麦粉それからマドレーヌ』

卵と小麦粉それからマドレーヌ (ピュアフル文庫)

卵と小麦粉それからマドレーヌ (ピュアフル文庫)

 わたしは、図書館で見かけて、「表紙とタイトルがおいしそうだなあ」と単行本を手に取ったのだけれど、文庫も出てたのですね…欲しいなあ。

 中学生になったばかりの菜穂と、菜穂のママ。それぞれが、「じぶんを獲得していく」(P.129)物語なのだと思います。

 女の子同士の友情っていいなあ。菜穂が、「やなやつ」と思っていた亜矢と、掛け値なしに「友達」と呼べる関係になっていく過程がいいのです。一緒に図書室に通ったり、本をプレゼントされたりというエピソードに、ときめいてしまいました。

 ともすれば暗く、生々しくなってしまいそうな部分(亜矢の抱えている問題とか)もあるのですが……やわらかい雰囲気は崩れません。必要以上に、生々しくなるところを暴こうとはしていないのでした。それに、基本的に登場人物みんな、ものわかりがいいのです。これは度が過ぎてしまうと、「都合がよすぎるんじゃないかなあ」と感じてしまうけれど、この物語はそうはなりません。読み心地がよくて、安心できます。


 ……だから、「『800』の川島誠、大絶賛!」というAmazonの内容紹介が、なんだか意外でした……。川島誠さんの作品は、生々しいところをとことん暴き出しているという印象だったので。いや、書く作品と勧める作品が同じようなタイプじゃなきゃいけない決まりなんてないのですが、見た瞬間は「意外だー…」と思ってしまいました。

 じぶんのじゃない水着に、「かわいい」を言いあいながら、じぶんの水着をいちばん気に入っている女の子たち。(P.88)