『児童文学の異界・魔界』より引用

石井 (前略)那須さんの作品の中では「ズッコケ三人組」や「お江戸の百太郎」に比べてあまり注目されなかったんだけど、島本理生さんという若い小説家の方が、夜中の居酒屋で青年が主人公の「私」に語る話として「The End of the World」を使ったんですね。『リトル・バイ・リトル』のあとがきなどによれば、島本さん自身が小学校のころに読んですごく印象に残っていたんだそうです。

 島本さん、「作家の読書道」で「きょうはこの本読みたいな」シリーズが好きだったとおっしゃっているので、たぶん、「The End of the World」も、そのシリーズの『だれかを好きになった日に読む本』で読まれたのではないでしょうか。
 『ナラタージュ』でも、稲垣足穂一千一秒物語』が、主人公が「児童書のコーナーで読んだことがある」本として登場したけれど、それもこのシリーズのどれかに収録されていたはず……。


 石井先生は『だれかを好きになった日に読む本』のあとがきを書いていて、このシリーズの編者の一人なんですよね。
 このあいだ授業で、宮川健郎先生から、「きょうはこの本読みたいな」シリーズは「現代児童文学研究会編」となっているけれど、それは三人の編者の名前を並べるのが見た目としてあんまりよくなかったからそうしただけで、この研究会は実在しないと聞いて衝撃を受けました(笑)。