■
イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫)
- 作者: トルストイ,望月哲男
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/10/12
- メディア: 文庫
- 購入: 7人 クリック: 44回
- この商品を含むブログ (35件) を見る
ここでもまた、過去へさかのぼればさかのぼるほど、自分はそれだけ生気にあふれていた。人生の幸もたっぷりあったし、命そのものもたっぷりあった。幸と命がひとつに解け合っていたのだ。「ちょうど苦痛が時を追うごとにますますひどくなってきたように、人生全体も時とともにますます悪くなってきた」――そう彼は考えた。ただひとつの明るい点が後ろに、人生の始まりにあり、後は先へ行くほどどんどん暗く、そしてどんどん速くなってきた。
「死からの距離の二乗に逆比例するのだ」――イワン・イリノチはふとそう思った。(P.126)