ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 浅羽莢子訳 『わたしが幽霊だった時』 創元推理文庫

わたしが幽霊だった時 (創元推理文庫)

わたしが幽霊だった時 (創元推理文庫)

 自分が誰なのかわからない、なんのためにここにいるのかわからない。わかっているのは自分には体がなくて、どうやら幽霊になってしまったらしいということだけ……という主人公側から語られるので、読み手としても最初は何が何だかわからずもどかしかったです。登場する姉妹たちの性格の強烈さや、きょうだいげんかの激しさや、両親の娘たちへの無関心っぷりはすさまじいです。これは、「かわいそう」と言ってもいいくらいの設定かもしれないのですが、その突き抜け方はどこかおかしみを含んでいて、悲惨な感じはしないんですね。それらに圧倒されながら読み進めるうちに、だんだん事情がはっきりしてきます。時空を超える冒険が始まってから、ラストまでの展開には一気に引き込まれました。