補足

やおいとは、おもに少年まんがやアニメの登場人物だけを借用し、美少年同士の妖しい同性愛的な物語に書き換える趣味のことである。男のオタク(アニメマニア)がアニメの物語世界の「読み解き」に血道をあげているのに対し、女のオタク(アニメマニア)が物語の「書き換え」に向かうこと。男のオタクが少年アニメと少女アニメも等しく愛好するのに対し、女のオタクが、少女アニメには見向きもしないこと。これは、彼女たちが与えられた物語に充足していない証拠かもしれない。彼女たちが美少年に固執する理由は、いろいろ取りざたされているが、彼女たちが「禁断の愛」に固執するのも、アニメの国で「健全な愛(と大人の男が思っているもの)」を過剰に押しつけられた反動かもしれない。なお、「やおい」の少女たちが例外的に認めた(?)少女アニメは『セーラームーン』である。彼女らが『セーラームーン』をレズビアンの物語として「書き換え」た経緯については、藤本由香里の秀逸な少女まんが論『私の居場所はどこにあるの?』(学陽書房・1998年)を参照のこと。

 斉藤美奈子『紅一点論』(ちくま文庫・2001年)P.226より引用。
 昨日のエントリで使った「書き換える」という言葉はここからきてます、と補足しておきます。