児童文学 文庫化の謎

 現在「バッテリー」は書店の角川文庫の平台に必ず置かれていますし、漫画版も角川の雑誌で連載されています。もうすっかり角川になじんでいますが、もとはといえば児童書専門の出版社教育画劇が育てたシリーズです。

 このところ児童文学の一般文芸界への流出が話題になっていますが、もとの出版社にどれだけ恩恵がいっているのかが気がかりです。おいしいところだけ大手出版社にひっさわれているのだとしたら児童書の出版社が報われません。理論社のロングセラー「カラフル」(森絵都)もとうとう文春文庫に落ちましたし、この流れは気になるところです。

 森絵都作品の文庫化については、ずっと気になっていることがあります。

森絵都作品文庫化リスト

  • 『リズム』(講談社・1991年)→2006年 講談社青い鳥文庫(続編『ゴールド・フィッシュ』も収録)
  • 『宇宙のみなしご』(講談社・1994年)→2006年 フォア文庫
  • 『流れ星におねがい』(童心社・1995年)→2002年 フォア文庫
  • 『アーモンド入りチョコレートのワルツ』(講談社・1996年)→2005年 角川文庫
  • 『つきのふね』(講談社・1998年)→2005年 角川文庫
  • 『カラフル』(理論社・1998年)→2007年 文春文庫
  • 『DIVE!!』(講談社・2000年〜2002年)→2006年 角川文庫


 児童書として出版され、文庫化された主な森絵都作品を並べてみました。青い鳥文庫フォア文庫は児童書レーベルなので、「一般文芸に進出した」と見なされるのは『アーモンド入りチョコレートのワルツ』『つきのふね』『カラフル』『DIVE!!』の4作品だと思われます(最初から「一般向け」として出版された『永遠の出口』以降を除くと)。
 出版事情に明るくない一読者からすると、講談社から出た『アーモンド入りチョコレートのワルツ』『つきのふね』『DIVE!!』がなぜ角川文庫に落ちたのかちょっと不思議です。たつみや章魚住直子風野潮梨屋アリエ草野たきといった講談社児童文学新人賞出身者*1の作品は、ぞくぞくと講談社文庫になっているのに。*2
 でも、講談社が児童文学を文庫化しだしたのはけっこう最近のことだったような……と思い、先ほど名前をあげた5人の作家の作品の中で、いちばん最初に文庫化されたのはどれかなーと調べてみると、梨屋アリエ『でりばりぃAge』と風野潮『ビート・キッズ』でした。2006年4月のことです。講談社の児童文学作品文庫化ラッシュが始まったのは、このへんからだと思われます。


 『アーモンド入りチョコレートのワルツ』や『つきのふね』が2005年に文庫化されているのを考えると、角川の方が早くからヤングアダルトと呼ばれる作品の文庫化に熱心だったのかな。(ちなみに『バッテリー』1巻が文庫化されたのは2003年12月)。

講談社文庫の背表紙の色

 2006年以降に文庫化された、たつみや章魚住直子風野潮梨屋アリエ草野たき、それから福永令三クレヨン王国の十二か月』やルイス・サッカー『穴』などは、背表紙の色*3がほぼ同じですよね(チェックしきれてないと思うので、もれがあったら指摘してください)。児童文学はこれで統一されるのだろうか。*4
 あ、でも、あさのあつこの「NO.6」はたしかその色じゃなかったはず……はやみねかおるも違った気がするけれど、どうだったっけ。背表紙ベージュは講談社児童文学新人賞受賞作家か海外YAに限られるんだろうか……。明日本屋さん行って調べてこよう……

*1:参考:e-hon 講談社児童文学新人賞受賞作紹介

*2:もしかしたら、同じく講談社児童文学新人賞受賞作品の『リズム』は、これから講談社文庫になる可能性があるのかもしれないけれど

*3:何色って言えば適切なんだろう……すすき色?ベージュ?

*4:……ぱっと浮かんだものでは、佐藤さとるだれも知らない小さな国』は1973年に、松谷みよ子『ちいさいモモちゃん』は1987年に、ひこ・田中『お引越し』は1995年に文庫化されているけれど、これらは絶版。もちろん背表紙の色は違いました。『だれも知らない小さな国』は水色緑色、『ちいさいモモちゃん』はピンク色、『お引越し』は黄色でした