児童文学 文庫化の謎 その2

 時系列で考えるとおもしろい傾向が見えてきますね。さすが角川書店は先見の明があったというところでしょうか。角川文庫ではほかに川島誠作品もこのジャンルに入れられると思います。2002年6月の「800」から始まり、立て続けに数冊刊行されています。

 他の文庫に目を向けると、新潮文庫も重要な役割を果たしています。1994年3月の「夏の庭」(湯本香樹実)、2000年12月の「裏庭」(梨木香歩)、2001年7月の「西の魔女が死んだ」(梨木香歩)なんかは、もう夏休みの読書感想文の定番になっています。

 あとは新興のピュアフル文庫あたりをフォローしておけば、ここ10年くらいのYA作品の文庫化の流れを概観できると思います。

 返信ありがとうございます。さらにいろいろ気づかされました。
 佐藤さとる講談社文庫の背表紙は緑色でした。あちゃあ。昨日のまちがいをおわびして訂正いたします。
 角川が文庫化した児童文学といえば、川島誠を忘れちゃいけないですね。


 ……初出の時は児童書扱いだったはずの作品をおさめた『セカンド・ショット』や『夏のこどもたち』も、あんまり「元々は児童書だった」ということを明確に打ち出された売られ方はしていないような気がします。あさのあつこ『バッテリー』が「これは本当に児童書なのか!?」と、森絵都『つきのふね』が「YA文学の金字塔!」と宣伝されていたことに比べると、ですが。

 ええと、あと、近年新潮文庫になった児童文学として、ぱっと思いつくものを列挙してみる。

笹生陽子作品文庫化リスト

  • 『ぼくらのサイテーの夏』(講談社・1996年)→2005年2月 講談社文庫*1
  • 『きのう、火星に行った』(講談社・1999年)→2005年3月 講談社文庫
  • 『楽園のつくりかた』(講談社・2002年)→2005年6月 角川文庫
  • 『バラ色の怪物』(講談社・2004年)→2007年 講談社文庫
  • 『ぼくは悪党になりたい』(角川書店・2004年)→2007年 角川文庫


 昨日、講談社の児童文学文庫化は2006年4月の梨屋アリエ『でりばりぃAge』や風野潮『ビート・キッズ』あたりから始まったのではないかと書きましたが、それより1年以上前(2005年2月)に笹生陽子が文庫化されてたんですね(うう……昨日えらそうに書いてしまって恥ずかしい……)。調査不足で先走ってすみませんでした。
 でも、笹生陽子の二作品が出てから約1年間、YA作品の文庫化はなされてないようです(とか言って、また見落としてる作品があったりして)。そのあいだに元は講談社から出ていた森絵都『アーモンド入りチョコレートのワルツ』『つきのふね』が角川文庫になってますね。

 それにしても、『楽園のつくりかた』だけ講談社→角川文庫なのはどうしてだろう……。

講談社文庫の背表紙の色


 2006年以降に文庫化された、たつみや章魚住直子風野潮梨屋アリエ草野たきルイス・サッカー『穴』などは、背表紙の色がほぼ同じだと昨日書きました。
 坂元純・片川優子笹生陽子も同じ色でした。
 国内の作家に関しては、やっぱり講談社児童文学新人賞出身者(受賞者一覧はこちら)がこの色で統一されているようです。(坂元純と片川優子は佳作、笹生陽子は入選……だったはず)

 ちなみに、写真にもうつってますが、あさのあつこ『NO.6』は違いました。高里椎奈と同じ色ですね。はやみねかおるは水色でした。

 これらをふまえると、(笹生陽子作品の文庫化は2005年なので)「2005年以降に文庫化された講談社児童文学新人賞出身作家の作品」の背表紙がベージュで統一されていると言えそうです。

 国内のものに関しては、「講談社文庫の背表紙の色は著者が選ぶ」とはてダのキーワードにもありますが(昨日mixiメッセージでもこのことを教えていただきました。この情報のソースは、2003年頃の週刊文春ホリイのずんずん調査」らしいです。ありがとうございます)、YA作品に関してはあてはまらないのだろうか。

 海外は……ええと、わたしの知る限り、『穴』の他にゲイリー・シュミット『最高の子』などが背表紙ベージュなのですが……他の海外作家の講談社文庫は青がほとんどなので、これはやっぱりYAとして区別されているのだろうか。自信ないですが;;

*1:2005年2月発行の青い鳥文庫版『ぼくらのサイテーの夏』には『きのう、火星に行った』も収録されている