森見登美彦 『四畳半神話大系』 太田出版

四畳半神話大系

四畳半神話大系

 気分転換のために勉学に励もうとした。しかし教科書に向かっているうちに、この不毛に過ぎた二年の遅れをがつがつとみっともなく取り返そうとしているような気分になってきた。そんないじましい己の姿が私の美学に反するのは言うまでもない。したがって勉強は中断を余儀なくされた。私は信号が点滅しても決して走らないことを信条としている。つまりは紳士だということだ。(P.19)

 登美彦氏(id;Tomio)いわく「荒くれ者」「ひねくれ者」の次男、『四畳半神話大系』を読みました。
 ぴかぴかの新入生の時、どのサークルを選んだのかを分岐点に繰り広げられる4つのパラレル大学生活。ああまた出てきたよこの人、また来たよこのエピソード、とにやにや。主人公の親友で、顔は「縁起の悪そう」、性格は「他人の不幸をおかずにして飯を三杯食う」と評されている、気持ち悪い奴であるはずの小津が、最後まで読むとなんか愛着わいてかわいく見えてきてしまいました。