いちばん嫌い

 友達にしろ家族にしろ、わたしはすっごーく「人」に恵まれてるなぁ、と思う。幸せな環境にいるなぁ、と自覚する一方で、寝転がってぼーっとしている時なんかに、「あー、このままいなくなりたいなー」という考えがふっと浮かんできてしまうことがある。


 消えたいとずっと思っていた気がする。わたしっていう存在も塵ひとつ残さずに消えて、わたしと関わったすべての人はわたしがいたことを完璧に忘れてしまえばいいと、そんなことを夢想していた。


 わたしなんか最初からいなければよかったのに、生まれてこなければよかったのにと呟くくせがぬけていない気がする。少しでも面倒なことにぶつかると、「わたしなんか消えちゃえばいいのに」と呟きながら逃避するくせが。


 大して辛い経験なんてしたことないくせに、苦労知らずのくせに世間知らずのくせに、そんなことを思う自分が、いちばん嫌いなのだ。